引き籠もり生活が続いていて、よくネット配信の映画を観るようになった。
観たかったけど見逃していた作品に出会ったりして、
引き籠もりでネット配信にはまった人も多いようだ。
「万引き家族」は2018年に公開され、カンヌ映画祭でも賞をとり、絶賛された作品。
最晩年の樹木希林が出演していたことでも話題を集めた。
公開中はそれほど観たいとは思わなかったけれど
ちょっと気になることがあって、観ようと思った。
幼児虐待、年金不正受給、家族の絆…
現代社会が抱えている様々な問題を盛り込んでいるけれど
声高に意見を主張するような映画ではない。
途中のエピソードも尻切れだったり、
もわもわした感じが終始つきまとう。
映画に対して、カタルシスを求めているのなら
この映画はつまらない内容だろう。
悲惨な現実にとどまって見せつけて、
さぁ、あんたはどう思う、と迫ってくるから。
この映画の最大の見せ場は、役者たちの演技だ。
特に、安藤サクラという女優が素晴らしい。
前半から、昭和の場末感を醸し出していて、
リリー・フランキーと夫婦役なのだが、
目線や表情のニュアンスの出し方が自然で美しい。
美女ではないけど、美女に見えてくる。
こういう女性って、昔、いたよな、と懐かしい感じもある。
ネタバレになるからあまり書かないけど、
ドラマの終盤のほうで、
「死体遺棄ではないか」と婦人警官に詰問され
「捨てたのではない、拾ったんです」と安藤サクラが応える。
この映画のすべてがこの言葉に凝縮されている。
「子どもたちになんて呼ばれていたのですか。
ママ、おかあさん…」とまた警官に聞かれ、
数分間、髪をかきあげるだけのシーンが続き
「なんだろうね…」と何とも言えない表情で応える。
このシーンは圧巻。同情を誘う涙ではない。
母よりも母なのに母になれない哀しみが滲み出ている。
すげぇ、安藤サクラ!
犯罪者をあつかった映画だけど。
まぁ、彼女の行為はつねに「愛」を土台にしていて
最後は罪をひっかぶったりして、
変なことを承知でいえば「正義の味方」。
ドラマとして唯一の「救い」があるんだよね。
それでも、何かが解決するわけではなく
閉塞感のなかに、登場人物たちはみんな絡みとられていく。
この映画のラストは救いようがないんだよなぁ。
ワタクシ的な期待では、彼女に、何かを拾わせてほしかった。
男を拾い、老婆を拾い、子どもを拾ってきたのだから。
でも、監督は、そんなハッピーエンドにしたくなかったんだろう。
拾うほうは夢物語で、拾われるほうが生々しい現実。
カンヌ映画祭では、ハリウッド的な解決法は好まない。
すべてを計算してのラストだったんだろうな。

星5つで評価するとしたら、★★★★ですね。
役者たちの演技とそれを引き出す演出が素晴らしくて、
とても、いい映画だけど、僕は、もっと夢を見たい、楽しみたい。欲張りだね。

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