広告批評その他あれこれ

佐々木秀実を聴いた

2014/04/23
 
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佐々木秀実というシャンソン歌手をご存じだろうか?
CDによるメジャーデビューをしていて、
テレビにもちらほら出ているから、
けっしてマイナーではないのだが、
魚屋のおばさんだって知ってる、というほどのメジャーではない。
同じシャンソン歌手でも、紅白に出演したクミコのほうが有名だろう。
そういう意味では、まだ知名度が低く、マイナーな歌手である。
だいたいシャンソンというジャンル自体がマイナーで、
いまどきシャンソンを聴こうなんてのは、
花の都パリに憧れた遠い昔の世代ぐらいだろう。
若い人にシャンソンと言ってもピンと来ないに違いない。

僕は、中学時代、大好きな長谷川きよしが好きな歌手という理由で、
シャンソン歌手、ジルベール・ベコーのLPを何遍も聴いた。
あとエディット・ピアフも聴いて、フランスのビリーホリディだな、と。
ほかに何人かの男性や女性のシャンソン歌手を聴いたが、
どれもなんか大袈裟な感じがして、ベコーほどには好きになれなかった。
メケメケはベコーを先に聴いて、あとから丸山明宏を知った。
というわけで、多少は、シャンソンの世界にもなじみがあって…。

ある日、シャンソンを知っているなら、と、
知り合いから勧められて、佐々木秀実のライブへ出かけた。
それまで、彼女のことは、ほとんど知らなかった。
小さなライブハウス、伴奏はピアノだけ、
派手なロングドレスを着て現れた彼女は、
化粧はしているが、とりたてて美人ではない。
ほんとうの性は、男だとは聞いていたが、
小太りのおばさんにしか見えない。
笑ってはいけないと思いつつ、
可愛い魔除け人形のようだ、と思った。

しかし、歌い始めると、僕は魔法にかけられた。
女性の声でも、男性の声でもない、
その声には、不思議な魅力があった。
その表現には、見事な説得力があった。
日本語によって描き出されるパリの情景…
男女の色恋が多いのだが、その微妙な心の揺れを
色彩豊かに表現して、聴衆を飽きさせない。
歌詞を愛おしく丁寧にあつかって、歌によって絵を描いている。
一瞬、エコールドパリの画家たちが描いた
パリの風景が目の前に現れたように感じた。
非現実的な世界を、リアルに感じさせるのは、
彼女の図抜けたタレントがなせる技であろう。
ぐいぐいと歌の世界に引き込まれていった。

歌の合間のMCも、観客の反応を見ながら、
笑わせたり、間合いが絶妙に面白く、話術にも長けている。
地方で、これだけの話術は、寄席以外では、お目にかかれない。
プロの第一線で芸を売っている一流は、
何をやっても一流なのだな、と妙なところでも感心した。

芸人という言葉が浮かんだ。

最近のテレビを観たりすると、素人ばかりがもてはやされて、
本物のプロフェッショナルが少ない。
消耗品、使い捨ての芸能は、時代によりそうことはできても、
人間によりそうことはできない。

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芸を売る、そのために、芸を磨く。
その芸によって、人を感動させる。
非日常の場面から、芸人は立ち上がり、
一瞬、人々の心を解放させる。
勇気やエネルギーをもらった人々は、
日常の世界へと安心して戻っていく。

佐々木秀実は、単なるシャンソン歌手ではない。
男でもなく、女でもなく、
シャンソンでもなく、誤解を恐れずに言えば、歌手ですらない。
異次元の歌の世界に人々を誘惑して、
そこで時間を忘れさせてしまうセイレーン。
川原でよい子をたぶらかす川原乞食。
いい意味での、日本古来の芸人の血を、
正しく現代に伝承しているのだと思う。

まぁ、これは、YouTubeやテレビでは、伝えきれないところ。
彼女の生の呼吸に触れ、歌や語りの心地よいリズムに酔いしれる。
ライブでしか、彼女を体験することはできないだろう。
残念ながら…でも、それこそ、彼女の本物の証しでもある。

動いている佐々木秀実は、YouTube上に、ほとんど、ない。本来の持ち歌ではないけれど、知らない人のために、いちおう…。

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Comment

  1. KIKU より:

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