勝間和代をここ一年間くらいで、テレビでよく見かけるようになった。
でも、そんなに魅力的ではないのに、なぜ、こんなにいろいろな番組に顔を出せるんだろうか、と僕は首をかしげていた。
マイクを握って、半開きの眼で言葉をまくしたてる彼女に対して、いい印象を持つ人は一般的にも少ないんじゃなかろうか。
経済のことをよく知っていて、私って、頭がいいのよ。
マッキンゼーで鍛えられて、私って、特別な女性なのよ、という鼻持ちならない自信とエリート臭がぷんぷんしている。
テレビで彼女のカメレオンのような顔が出てくると、僕はチャンネルをさっさと切替えたりした。
勝間和代の名前を初めて知ったのは、「自分をグーグル化する方法」という言葉だった。
本は読んでいなかったが、そのサブタイトルを聞いて、僕はこう思った。
「こちとら人間なんだから、グーグルなんかにゃあ、なりたかねえよ」と、なぜか訛ってしまうのだが、「グーグル化」というその一言と、サイボーグのような勝間女史の顔がだぶってきて、やはり好きになれない存在ではあった。
つまり、興味がない、どうでもいい。そんなアンチ勝間和代であったが、テレビのコメンテーターとしておなじみの精神科医、香山リカとの対談やその周辺の記事を通して、またTwitterでの劇的なデビューによって、心の端っこから少し中央のほうに関心が移ってきた。
そこで、勝間和代を、少し知りたいと思った。テレビで見た印象だけで嫌うのではなく、実際の著作を読んでみようではないか、と。
読み終えた感想は…勝間和代って、とっても性格が素直な頑張り屋さんだなぁ。
生意気で冷たそうだと外見で人を判断していた自分を反省。
本書では、知的生産性を上げるという、ビジネスの大きな課題に取り組み、それに対して彼女なりに成功した方法論を提示している。
その内容自体は、独創的なメソッドがあるわけではなく、いろいろな正しい方法論の組合わせであるように感じた。
たとえば、フレームワーク力について書かれている文章では、もっと深く知りたいと思うと、詳しくはこれこれの本を読みなさい、と。
けっこう、あれこれと本が紹介され、自己完結しないのも、この本の大きな特徴。
さすがに毎月100冊、15万円を使っている著者ならではの書き方である。
デジタルツールの使いこなしを推奨したり、読書の重要性やネットの活用にも触れているけれど、根底にある思想は、リアルな実体験を大切にしようという、突っ込みようのない、オーソドックスなもの。
6時間の睡眠とか、白いものをひかえる食事とか、細かな生活の仕方についても触れており、それらは確かに正しい、集中力を養う正しい方法なのであろう。
いろいろな要素がてんこ盛りになっており、どれも、いいことばかりなのだが、それを熱心にやっている著者は、やはり、周りが引いてしまうほど、スゴイ。
誠実で真面目な努力家だと言わざるを得ない。
特に「第5章 知的生産を根底から支える生活習慣の技術」は、著者らしさがいちばん滲み出ている章ではなかろうか。
寝る前にストレッチ体操をするのがいいと言う。
「たとえばストレッチ体操ですが、私は習慣化するために、以下の2つの方法を併用しています。」
ひとつはストレッチ体操のDVDを枕元で見ながら、寝る前に12分間のプログラムを実行する。
もうひとつは、「快眠プログラムマット」で15分間のストレッチをしてくれるようにセットする。
寝る前の30分が充実している。こういう小技を始め、テクニックをたっぷりと披露している。
著者は、この本で描かれているような素晴らしい生活リズムで生きて、そして知的生産性を高めているのだ。
もう、脱帽するしかない。深夜ストレッチしている、その健気さな姿をイメージすると、なんだか、これまでのイメージが崩れ、かわいらしい女性だなと感じた。
勝間和代さん、僕は、本書を読んで、あなたへのイメージが変わりました。
大きな風呂敷の中に、メニューをいっぱい広げたような内容には、眼から鱗が落ちるような発見や気づきが、そんなにありませんでした。
あなた自身も、この中のどれかが役に立ってくれればいい、と述べておられますね。
おそらく本書は、処女作に近いものとして、著作への原衝動がたっぷり詰まっているのではないでしょうか。
僕は、その内容よりも、勝間さんのひたむきな生き方に、感動しました。
先輩達からいろいろ教わりながら、成長していく勝間さんの物語。
ビジネス本というより、青春小説。これは、シニカルな意味ではなく、ほんとうに、そう読むことができると思います。
だからこそ、単なるスキルの信奉者ではなく、自転車でビジネス街を疾走するカツマーなる人たちを生み出したのでしょう。
働く女性たちが、勝間和代をめざすのは、とっても素敵なことのように思えます。
男性だって、スケールは違いますが、坂本龍馬や織田信長に憧れたりするではありませんか。
女性には今まで、めざすべきアイコンが少なさすぎました。
勝間さんをテレビで見かけたら、これからは、決してすぐにチャンネルを変えたりはしません。
あなたは、21世紀初頭を疾走する、健気な女性の生き方のアイコンでもあるわけですから。
※追記2018年5月28日付のBuzzFeedNEWS 同性を愛するということ 勝間和代のカミングアウト を読みました。またまた見直しました。感動しました。新たに記事をアップしましたので、こちらの記事と併せて、お読みくださん。
■関連エントリー>>勝間和代さんのカミングアウトに拍手
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