平 和 【rough story 61】

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ピースではなく、麻雀の話。
1970年代後半、麻雀が流行っていた。
雀荘は、駅から、大学までの間、10軒近くあった。
雀荘は、駆け出しの人生を学ぶ学校でもあった。
勝負師みたいにクールな奴、
手牌の良し悪しがすぐ顔にでる奴、
負けが込むと怒り出す奴…
通常の学園生活では知り得ないことばかり。
役の作り方にも性格が現れる。
少しでも役満の可能性があれば、
すぐにそっちに走る奴、
チーポンとすぐに牌をさらす奴、
逆に、リーチだけで上がろうとする奴…
これも人によって傾向が分かれる。

仲間で平和(ピンフ)にこだわってる奴がいた。
どんな配牌からも平和に持って行こうとする。
アガリの可能性が高い役ではあるが、
いつも平和なので、捨て牌から、
だいたい読まれてしまうことが多く、
上手な打ち手ではなかった。
それでも、負けが込んでも
にこやかで平和な物腰だから、
いっしょに卓を囲むのは楽しかった。
その夜も、遊ぶ約束をしていた。
だが、約束の時間になっても姿を見せない。
しかたなく、暇な奴を見繕って遊んだ。
後日、彼が顔を見せなかった理由がわかる。
内ゲバで、ぼこぼこにされたのだという。
目を腫らしながら、卓を囲む。
ツモ。メンタンピン、イッパツ、ウラドラ。
おおっ、見事な満貫。
今日は当たってるなぁ。
だって、平和が好きなんだよぉ。
麻雀ではなく、ピースの話。

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