宇宙人にさらわれそうになった。
夢だったのだろうか、それとも…。
僕は新聞配達のバイトをしていて、
早朝、配達店まで自転車で出かける。
あの日は、灰色の雲が垂れ込めていて、
その雲の下に、宇宙船らしき、
巨大な物体が浮かんでいた。
窓らしきものが、3つ横に並んでいた。
茫然と見てると、灰色の雲を切り裂くように、
船から上空に向かってサーチライトが伸びていった。
ぐいっ、ぐいっ、ぐいっと円い筒を伸ばすように、
その光は動いていき、やがて、角度を下げて、
僕のほうをめざして、向かってきた。
恐怖を覚えた。さらわれる。そう直感した。
自転車のペダルを思いっきりこいだ。
配達店に着いて、みんなの顔を見て、
ようやく落ち着きを取り戻し、あの空を振り返った。
だが、そこには宇宙船の姿は、もう、なかった。
「ああ、なぜ、僕は、恐怖したのだろう」
安堵感とともに、後悔の気持ちがわき起こった。
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