ふるさと 【rough story 24】

スポンサーリンク

ふるさとの景色は、まったく変わって、
知っている人も、ほとんどいないだろう。
都会へ流れて、また流されて、
ふるさとを、遠く離れて、生きてきたから。
生まれ落ちたマイホームタウン、SHINJUKU。
もうひとつのマイホームタウン、SUGINAMI。
少年はいつも、まっすぐは家に帰らず、
ボールが見えなくなるまで、原っぱで草野球をした。
通学路の麦畑の、黄金色の輝きがまぶしかった。
見上げる夜空には、天の川がかかっていて…
北斗七星、オリオン、友達と天体望遠鏡をのぞけば、
ニキビ面の満月がほほえみを返してくれた。

でも、ある日、気づくと、砂利道がなくなり、
原っぱも、麦畑も、天の川も、なくなってしまった。
少年は、ちょっぴり、寂しくなり、不安になった。
風景がどんどん遠ざかってゆくようだった。

だから、大人になって、旅に出たのだろう。
両腕を伸ばして、ふるさとを抱き寄せたい。
失われた星たちを取り戻しにでかけたい。
ふるさとは、ひとつじゃ、つまらないから。
生まれたところ、育ったところ、
思い出にだって、ふるさとの居場所がある。
そして、愛しいひとのいるところ、
帰ろうよ、帰りたい場所へ、そこが、ふるさとになるはず。

コメント

タイトルとURLをコピーしました