70歳過ぎた老婆のことを、村人はうわさする。
「あの女は、隣村から嫁に来たよそものだから」
5年暮らそうが50年暮らそうがいっしょなのだ。
都会も信州の山里と、それほど変わらない。
「江戸っ子っていうのは…」と生粋の東京人が言う。
「三代続かなければ認めないからね」
東京に暮らすほとんどの人間は、地方で生まれ育っている。
よそものだらけの街。それが東京のほんとうの姿。
地縁血縁が少ない分、どこかで小さな縁を求め合っている。
よそもの同士にしか、わかりあえない気持ちだってある。
しがらみから離れて、僕らは、自由という名の孤独を手に入れた。
つながりから離れて、僕らは、痛みに似たやさしさを手に入れた。
コメント