最近はあまり耳にしなくなったが、ひと昔前の広告マンの間では「AIDMA(アイドマ)の法則」は必須キーワードだった。消費者が商品を購買するまでのプロセスを以下の5つの段階に分けたもの。
1.Attention(注意)
2.Interrest(関心)
3.Desire (欲求)
4.Memory (記憶)
5.Action (行動)
業界ではあまりにも有名な法則で、若い頃にきちんと教わった記憶はあるのだが、その正確な内容はおぼろげにしか覚えていない。まぁ、だいたい推測はできる。
広告制作者の立場から僕なりに咀嚼した勝手な解釈を書いてみよう。「インパクトのあるビジュアルやキャッチ、なんだろう?→注意」「説明を読んでもらうためのしかけ、デザイン→関心」「なぜあなたに必要なのか、購買意欲をそそる→欲求」「広告をメディアに何度も露出させる、しつこく→記憶」「チラシやPOP、店頭の一押しで購入に踏み切らせる→行動」
インターネット時代の新たな消費行動パターン
しかし、このAIDMAの法則では、インターネットにおける消費行動は分析できないのではないか? 2005年あたりから、広告業界では、新しいロジックが注目されるようになった。
それが、「AISCEAS(アイシーズ=愛せ明日)」の法則である。これは、アンヴィコミュニケーションズの望野氏が提唱した、ネット時代の消費者購買行動を示したもの。
1. Attention (注意)
2. Interest (関心)
3. Search (検索)
4. Comparison (比較)
5. Examination (検討)
6. Action (購入)
7. Share (共有)
注意と関心までは同じだが、そのあとのプロセスが違う。Googleなどで検索して、いくつかの類似商品を比較して、他人の意見も参考にしながら口コミを検討して、購入したあとはまた自分の感想をアップしたりして口コミ情報を共有する。
インターネットの普及に伴って、確かに商品に関する情報が莫大に増えた。企業側からの広報広告だけではなく、消費者=生活者もその商品についての口コミ情報を同じネットの土俵上で発信できるようになった。これがネット普及以前との大きな違いだろう。
このように言語化された概念をもとに、論議を深めていくのは大変いいことだ。
一時期、SEO対策に過剰な期待がかけられ、それがすべてに優先するという事態が発生していた。「検索」というのは、消費者が商品を選ぶ際のひとつのステップであり、もっと総合的かつ複合的な視点が必要であるにもかかわらず、検索上位表示だけが取りざたされた。検索のアルゴリズムが研究され、被リンク数を増やすために、スパム行為が横行したのだが…。
今は、当時のSEO熱狂から醒めつつあるようだが、では、総合的なマーケティングの視点から提案できる業者がどのくらいいるか。
機能で選ぶ、価格で選ぶ、感性で選ぶ
ただ注意したいのは、AISCEASの提唱者である望野氏ご本人も語っているのだが、この法則が有効なのは、あくまでも「機能価値の高い商品やサービスだけ」であるということ。成熟したマーケットの情緒価値による差別化は、AISCEASでは不十分かも知れない。
僕が一眼レフのデジタルカメラを購入した際、価格ドットコムの口コミや価格情報をはじめ、いろいろなWEBサイトを参考にしたのだが、最終的な決め手はニコンというブランドに対する愛着であった。ニコンを愛しているユーザをネットで探しながら、自分の購買に対する「決心」を固めていったのだ。つまり、選択の基準としてブランド価値が大きい。感性レベルでの好き嫌い、情緒価値が最終的な決定要因になっているのだ。
逆にデジタルカメラの記憶メディアを購入する場合は、ブランドに対する嗜好性は弱まり、価格と機能の比較だけで購入ボタンを押してしまうはずだ。これはAISCEASの原則がぴたりとあてはまるだろう。
制作者の立場から、このような新たなロジックを検討していくことは、とっても有意義なことだ。WEBクリエイターは、ややテクニック重視の方が多いから、このようなマーケティング発想をどんどん取り入れてほしい。頭でっかちになるのも困るけれど、ようは買う人の立場に立ったクリエイティブが大切。当たり前の結論だけれど、肝に銘じておきたい。
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