グスターボ・ドゥダメルはベネズエラのいまを象徴する

時事・世相
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2019年4月22日。テレビ番組で葉加瀬太郎さんが感動して魂が震えたと紹介していたのが、このベネズエラの指揮者グスターボ・ドゥダメルと国立のシモン・ボリバル・ユースオーケストラが演奏する「マンボ」という楽曲。

ひと目見て、すごい。圧巻!!

 

麻薬や銃よりも楽器を!「エル・システマ」という制度

ひょっとしたら、とYouTubeをサーチしたら、テレビで流されていた演奏と同じものを発見。

バーンスタインの名曲マンボをこんなノリで演奏するなんて、ひょっとしたらベストの名演ではないだろうか。

聴衆も声を上げるし、踊り出すし、音楽の楽しさがむちゃくちゃ伝わってくる。

見てない人はまず下の動画をご覧あれ。理屈抜きの素晴らしさだ。

TV番組では続けて、ベネズエラの犯罪率が高く、若者たちが麻薬や暴力の脅威にさらされているという現実が流された。

その中で実践されている、貧困児童のための音楽プログラム「エル・システマ」についても紹介された。

動画中で演奏していた若者たちは、すべてこの「エル・システマ」によって音楽教育を受けた人たち。この制度を使って音楽を学ぶ学生たちの70から90%は貧困層の出身である。

Wikipediaによれば・・・

エル・システマは、ベネズエラで行われている公的融資による音楽教育プログラムの有志組織であり、1975年に経済学者で音楽家のホセ・アントニオ・アブレウ博士によって「音楽の社会運動」の名の下で設立された。

さらに創設者のアブレウのヴィジョンを引用する・・・

「音楽は社会の発展の要因として認識されなければならない。なぜなら最も高度なセンスにおいて音楽は最も高度な価値、連帯、調和、相互の思いやりと言ったものをもたらすからである。そして音楽には全共同体の統一させる能力と崇高な感情を表現することのできる能力があるのだ」。

指揮者グスターボ・ドゥダメルもその恩恵を受けたひとり、1981年生まれというから、現在、38歳。

この演奏当時は、26歳。若さに満ち溢れた、素晴らしい才能。

ロサンゼルス・フィルハーモニックの音楽監督をはじめ、

いまや世界中の有名なオーケストラからも、オファーがくるほどのスーパースター。

こんな指揮者、そしてオーケストラがあるなんて、僕は知らなかった。

「エル・システマ」という音楽教育メソッドそのものは、

日本の鈴木メソッドとも関わりが深いようだ。

ただその方法論より「麻薬や銃よりも楽器を!」といった社会運動の面が色濃い。

ベネズエラの置かれている現状がよくわからないと、ほんとうの理解は難しいとは思う。

確かなのは、この社会運動の成果として、その象徴として、グスターボ・ドゥダメルが位置していることだ。

音楽家は「政府」に対して、SNSでどこまで戦えるか

ところでベネズエラは、南米の中でも、犯罪率が高いだけではなく、ひじょうに政情不安定な国でもある。

TV番組では、その辺には触れられていなかったが、2017年頃から、深刻なインフレや憲法を揺るがす暴政などニコラス・マドゥロ大統領の退陣を要求するデモが頻繁に行われている。

半端なデモ行進ではなく、なかには30人を超える死傷者と数百名の拘束者を出すこともあるほど。

武装グループが軍の基地を襲撃し武器を奪うなど、クーデターの不安まで出始めており、極めて不安定かつ危険な情勢とのことだ。

2019年1月マドゥロ大統領が2期目の大統領就任の宣誓。いまだにデモが収まる気配がないようだ。

日本の外務省のWEBサイトによれば、ベネズエラはほとんどが危険区域のレベル3指定。渡航は止めてください(渡航中止勧告)、というレベルである。

このような情勢のなか、ドゥダメルは、当初は、政治的な発言を行わず沈黙していた。

というのも、エル・システマが政府からの援助に負うところが大きかったからだ。

しかし、2017年5月3日、デモのなかで18歳のエル・システマの学生が殺されると、その2日後、自らのフェイスブックで彼はついに政府への批判を始めた。

音楽家が政治に関与することを否定的に言う人がいるけれど、

政治というのは好むと好まざるに関わらず、暮らしの根幹に影響する。

その暮らしや生命を脅かすような政治に対してモノを言うのは人として当たり前だ。

ただスポンサーが政府であることが、彼の当初の沈黙であり、苦悩の根源だった。

お金を出してくれるんだから、その命令は聞かなければいけない…という悪魔の囁き。

しかし彼は既にベネズエラという枠を越えて、世界で活躍しているスーパーアーティストだった。

国内の経済的な制約を無視して、海外でも影響力のある立場だからこそ、彼は声を発することができた。

すると彼が指揮するベネズエラ国立交響楽団のアメリカ公演が中止になったり、

すぐに政府からわかりやすい報復処置がとられるようになったけれど…。

ベネズエラなんて、地球の反対側の出来事で、日本に伝わる情報も

ほんとに微々たるものだから、正確なところはわからない。

でも、ひとつだけ。

ドゥダメルの音楽は、ひとの心を震わせる力を持っている。

同じように、その言葉は、ひとの心を動かす力を持っている。

遠く離れた日本の片隅で、僕は、ツイッターとフェイスブックだけはフォローしよう。

いま、彼に何が起きているのか。

情報の発信手段を持っているだけで、

それだけで権力に対峙することができる時代なのだから。

 

最後に友人からフェイスブックでこれもいいよ、と紹介された動画。

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