旧 友 【rough story 45】

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少年の頃、同級生なのに、大人だなぁ、
と感じていた旧友と、数十年ぶりに再会した。
声が変わらない。仕草が変わらない。
顔は、年相応に老けたけど、変わらないほうだ。
何よりも、人に接するときの情感と優しさが変わらない。
なんだか、ほろほろと気が緩んで、
声を聞くだけで、仕草を見るだけで、嬉しかった。
彼は、ビートルズを教えてくれた。
映画のウエスト・サイド・ストーリーや、
僕の知らない世界をたくさん教えてくれた。
でも、大人だなぁ、と感じていた世界へは、
当時、まぶしくて踏み込むことができなかった。

いま、それぞれの道を歩んで僕らは大人になった。
別々の世界で、たくさんの出会いがあって、
人を好きになったり、悲しい思いをしたり…
あたりまえだけど、まったく違う軌跡を描いてきた。
それぞれの体験がそれぞれの顔に皺を刻んでいる。
その皺を見て、思うことがある。
数十年前は、子供だなぁ、無垢だなぁ、苦労知らずだったなぁ。
まぶしいその時代へ、僕らはひとときの会話で、いっしょに踏み込んだ。

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