走るために生まれてきた。
その全身の肉づきには、無駄というものがまったくない。
顔は長く細く、空力特性を計算しつくされたような流線型だ。
真っ正面から受けた風は、たてがみから、しっぽにかけて、効率的に流れ、
四つの脚は力強く大地を蹴り、まるで宙を飛んでいるように見える。
草原を駆け抜ける駿馬を見れば、そのまま空へ駆け上っても不思議ではない。
古代の人々は天翔るペガサスを、きっとリアルに夢想したのだろう。
かくも美しい動物が、なぜ、この世に存在しえたのか。
しかし、彼?彼女?は、美しくあろうとしたわけではない。
おそらく、より速く走ろうという意思が、この動物には働き、それが進化を促したのだ。
速く、速く、速く、それだけで、美しく、美しく、より美しくなった。
繰り返す。駿馬たちは、美しくあろうとしたことは一度もなかった。
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