2005年秋、「Always 三丁目の夕日」が劇場用映画として200万人を超す観客を動員するヒットを飛ばした。その続編も作られて、最近、劇場公開されたばかりだ。
第一作は公開された翌年にJALのジャンボ機の中で見たのだが、そのとき、涙をぼろぼろ流してしまった。ううむ。してやられたり。つい先日、続編の公開に合わせて、テレビ放映されたのをまた見たが、やはり、泣いてしまった。年齢とともに涙腺が弱くなっているとはいえ、このドラマはよくできている。
僕は昭和32年の東京生まれ、この物語の舞台は昭和33年。だから、僕の幼少時代とも、だぶっているわけで、なんだか、むしょうに懐かしかった。ただ、映像が夢のなかのようなイメージで、きっと、僕の美化された思い出とも重なって見えるのだろう。ほんとうは、だって、もっと、もっとリアルなはずだ。セピアっぽく色褪せたポスターなんて、現実の昭和33年には、ありえない。
この夢の中のような幻想的なイメージは、どうやら監督が意図してつくりだしたものらしい。我々観客は、見ている間だけ、夢見心地の映像に気持ちよく騙される快感があった。
あと、シナリオがよくできている。いくつものドラマが同時に進行して、昭和の雰囲気を情緒的に伝え、おセンチに流れるかなぁ、という寸前で、ふわっと場面を展開する。涙の寸止め。お医者さんが家族団らんで過ごすシーンが実は狸に化かされていた、とか。ふつうに語れば、防空壕で妻とこどもが亡くなった悲劇だが、それを嫌味なく、夢へとつなげている。主人公が子供と抱き合うラストシーン近くは、これでもか、これでもか、とお涙を誘ってきたが、それでも、続くシーンでは、夕景のなかに、登場人物たちのさまざまなシーンをさわやかに描写して、その涙をカラッと明るく乾かせてくれた。
シナリオのセンスがいいのだ。ハリウッド映画をよく見てきたライターが、きっと書いたのだと思う。悲しみを夢へとつなぐのが上手い。「涙あり笑いあり」とよく言うけれど、日本映画には、どうも、まじめ過ぎる涙が多いような気がする。
洋画に影響を受けたんだろうなと思う象徴的なシーンは、小雪ちゃんが見えない指輪をかざすところ。出来のわるい日本映画なら、ありがとう、と言って涙を流しておしまいだ。だいたい、こんなオシャレな仕草をして似合う日本人の女性は少ない。小雪ちゃん、ハリウッド女優だから、絵になるのか。これを言っては、おしまい(笑)、か。
ともあれ。続編はまだ見ていないが、こういう映画を撮った監督がまだ43歳だという。山崎 貴は、映画監督であり、脚本家であり、VFXディレクターである。長野県松本市出身。楽しみな才能である。観たあとに爽やかな感動が残る。これなら、劇場に足を運んでも得した気分になれる。日本の映画界は、これから、ますます、おもしろくなりそうだ。
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