ふたたびYouTubeと著作権

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 前回に続いてYouTubeと著作権。これは、今後のネット社会の動向を考える上でもとても興味深い問題だ。ただ、僕は、法律の専門家ではないので、あくまでも、個人的な感想として述べようと思う。

 YouTubeに掲載されている膨大な映像は、いくつかの側面から考える必要があるだろう。
 まず、オリジナルに動画を撮影または編集して制作した著作権者がいる。次に、その情報をYouTubeにアップロードした介在者がいる。著作権者と介在者が同じであれば、問題は起こらない。しかし、その2者が異なる場合、介在者による著作権の侵害が発生する可能性がある。著作権者に無断で、他人の制作物を公の場に発表したことになるからだ。また、そのような発表の場を提供した会社は、著作権法違反を助長させた共犯者の可能性があり。YouTubeなどの動画配信サービス会社が訴えられるというわけだ。
 しかし、ネットの介在者が他人の著作物である放送番組を紹介する目的を考えてみれば、これは自らが利益を得ることではなく、「こんな面白い場面があったよ」という個人的体験をネット上の多くの人と共有することに主要目的がある場合が多い。
 放送メディアは、電波というインフラを利用して、ビジネスモデルを確立してきた。さらにビデオやDVDなどが普及すれば、コンテンツを再利用することによってビジネスを展開してきた。それらの主導権は、今まで、つねにメディア側が握っていた。
 ところが動画配信サイトでは、個人がメディア配信の主導権を握っている。俗っぽい表現を使えば、「うわさ」「井戸端」としてメディア化している。
 そんな「うわさ」に目くじら立てて、大人メディアが喧嘩すべきではない、という考え方もあるだろう。むしろ、もっと積極的に動画配信を利用して、放送直後の番組をYouTubeで配信するぐらいの太っ腹があってもいいのではないか。または、文章やサイトの「引用」と同様に捉えることはできないだろうか。
 日本の著作権法では、「引用」について次のように記されているので引用しよう。

第三十二条 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
(昭和四十五年五月六日法律第四十八号『著作権法』、第三十二条より引用)

 むかし、小説や映画の猥褻性と表現の自由を争点に、いくつもの裁判が行われた。

 法律は、人間と社会の間で、一定の約束事をつくって、もっと、より良い社会にしましょう、というものだ。だから、時代によって、見直しが迫られ、人々と社会との間に合意形成がなされれば、法律が改正される。著作権法の解釈、いや著作権法そのものに、もっと時代に即した柔軟性が求められるようになってきたように思う。

 中国の遊園地のように、ビジネスを目的にして、キャラクターのにせものを横行させる愚挙に対しては厳しく対処すべきだ。しかし、たとえば、会社の宴会でキャラクターのぬいぐるみを着たおちゃめな部長さんを逮捕するのはいかがなものか。
 まぁ、メディアとしての広がりの問題もあるので、部長さんと中国を同列に論じるのはあまりにも乱暴ではありますが…。

 今回は、以下の記事に大いに触発された。
CNET Japan Blog - 中島聡・ネット時代のデジタルライフスタイル:YouTubeを使ったテレビ番組の『引用』の合法性に関する一考察CNET Japan Blog – 中島聡・ネット時代のデジタルライフスタイル:YouTubeを使ったテレビ番組の『引用』の合法性に関する一考察


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