巨 匠 【rough story 38】

スポンサーリンク

才能にあふれた大きな存在だった。
老いても、なお、眼光炯々と強い意志を宿している。
彼の表現者としての徹底的なこだわりは、
常識的な作法をぶちこわし、時に誤解を招いた。
絵描きである。だが、語ることにもこだわり続けた。
江戸の浮世絵師、狩野派、縄文人に至るまで、
美の歴史を繙いたかと思えば、
急に翻って、アニメ、TVゲームにまで論をつなげる。
更に、社会思想、哲学の命題から
吝嗇な世相の悪口まで話は八艘飛び。
その禿上がった脳に次々と想いが去来するのだろう。
言葉がほとばしり、饒舌はつきることがないのだ。
そうして絵描きは、語り尽くし、考えに考えた末、
何も考えず、やにわに一本の線を描くのだった。
その姿は、修行僧のようだった。
ひとりじゃ寂しいから相手が欲しいのに、
いつも、どこかで共感を拒絶しているのだ。
さて、ひとりで漕ぎ出した舟は、
今頃、涅槃に、もう辿り着いたであろうか。

コメント

  1. 青磁手 より:

    一つの大きな幻影は
    化学反応のアイコンでも在った様な気がする。
    例えば環境だったり…分子だったり…触媒だったり…

    何れにせよ俗に言われる功績は大きかったから…
    祖師として、素子として、こう惜しまれる氏はやはり、
    大きな生涯だったのだと思う。

    一つの時のピリオドは確かに打刻されて
    その存在を誇張して逝った。

    そんな氏には、まだまだ、涅槃は似合わない。
    また今世に再生して続きの精進するのかな

    ♪心の突っかい棒を
    小さな船に乗せ
    夜の海に漕ぎ出した
    あの街にさようなら。

    兎に角  ありがとうございました。

  2. KIKU より:

    そうなんです。ほんとうは、今は、何も、語るべき言葉がないのです。
    このストーリーはフィクションですから。
    いずれにしろ、合掌…

タイトルとURLをコピーしました