八犬伝 【rough story 106】

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昭和48年から約2年間、NHKで毎日放映された
連続人形劇シリーズ「新八犬伝」。
当時、高校生だった僕は、この番組に 
自分でも驚くほどハマッた。
坂本九ちゃんの軽やかな語り口、
おどろおどろしい辻村ジュサブロー氏の人形、
そして何よりも奇想天外なストーリー展開。
この世に、こんな面白い物語があるのか。
ドキドキ、わくわく、という紋切り型の言葉が、
この物語を形容するのにぴったりだった。
高校生というのは意外と忙しいので、
夜の6時半頃に自宅にいられるとは限らない。
しかも、ビデオなんかなかったので、
観れないときは残念、それまでだ。
でも、強い印象はいまだに残り、
これはNHKの金字塔的なドラマではないか。
そんな風に、勝手に絶賛、最高の評価、星5つ。

滝沢馬琴の南総里見八犬伝を原作にしたこの物語は、
ぐいぐいと心臓を鷲づかみにする魅力があった。
仁義礼智忠信孝悌という八つの玉を持つ犬士たち。
彼らのチームワークによって悪者が退治されていく…
お姫様を救えという至極シンプルな構図。
登場する悪者はしっかりと悪者として描かれ、
勧善懲悪の典型的なドラマではあるのだが、
視聴者にカタルシスをもたらしてくれる。
人形、音楽、背景すべてに手抜きがなく、
とんでもなく高いクオリティーを保っていた。
子供向けの番組なのに、これは、いったい何だ。

僕だけではなく、このチームプレーと正義というモチーフに、
当時の日本人はたまらなく心をゆさぶられたのではなかろうか。
現代でも、なんとかレンジャーとか集団ヒーローものは、ある。
ただ、いかにも子供相手という映像を、大人は見向きもしないだろう。
当時の「新八犬伝」を企画したスタッフたちは、
大人の鑑賞にたえうる子供番組をつくろうとした。間違いない。

経済が失墜しつつあって、弱気な日本人が増えている
いまこそ、こういうドラマが必要なのではなかろうか。
内なる魂に呼びかけ、カタルシスと元気を与えてくれる
そんな物語がそろそろ生まれてもいい頃だと思う。

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