広告屋にとって「プレゼンテーション」とは日常業務である。つねに広告の企画を考えて、それをお客様=クライアントに提案する。毎日、この流れの中の作業を日々繰り返しているのだ。
小さな仕事から大きなキャンペーンまで、すべてに企画があり、そしてクライアントにプレゼンテーションの内容が認められて、それから広告制作に着手でき、さまざまなメディアの制作物を納品することになるのだ。
あうんの呼吸でわかるお得意のクライアントから、企画書を数10ページ用意して、パワーポイントを駆使して説明する新規のクライアントまで、クライアントによってプレゼンテーションの方法は実にさまざまだ。勝つときもあれば、負けのときもある。われわれ広告クリエイターは、プレゼンの数だけ、泣き笑いを経験している。
プレゼンテーションの成否の鍵とは、何であろうか?
広告のクオリティ、見積、政治的背景など、これも実にさまざまな要素が組み合わさっており、その都度、クライアントが最終的にジャッジする決定要因は異なっている。もし、勝つためのセオリーがあるとしたら、それはその決定要因を事前に的確に把握できるかどうかだろう。
僕は、ある会社の会社案内の競合コンペで、あえてコンセプト訴求だけに絞ったことがある。競合他社は全ページのデザインを制作してプレゼンに臨むだろうが、僕はコンセプトを説明するデザインだけを提示する戦略をとった。
なぜ、か?
そこの社長には一度もお会いしたことがなかったのだが、事前に知りえた情報から、このような戦略がウケると思ったのだ。社長は、日本の一流大学を出てアメリカ留学をしたMBA取得者。ビジネススタイルにも、なんらかの哲学を持っているに違いないと思った。
提案するコンセプトは、やや変化球ぎみにストライクゾーンを狙った。
コンセプト提案だけで良しと思ったのだが、間際になって、デザイナーと代理店が不安がって、最終的には、全ページのサムネイルもつくった。
プレゼン当日、30分間のうち、20分間はコンセプトの説明。残りの10分で全体構成を話した。社長からのリアクションは好印象で、手応えを感じた。
2週間後、代理店を通して、勝ったという連絡が入った。やはり競合他社は、正寸のカラーカンプ全ページを提出したようだ。「量じゃないよ、質だよ」と勝てば官軍、自画自賛。
相手を知ること。クライアントは何が好きで、何を重視するか。そこを見極め、戦略を企てることがプレゼンではいちばん大切だと思う。クライアントが、人間性に興味を持つ人であれば、プレゼンする人の人間性が問われる。
人間と人間、血の通った人間が出会うプレゼンは、ビジネスシーンにおける一騎打ちのようなものだ。だから、広告はおもしろい。やめられない。
プレゼンテーションに関しては、いろいろな本が出ているが、技術的なものは陳腐化するから避けて、おすすめは、コピーライターの真木準さんが編集した本。
コメント
近年、日常会話でも当たり前に使われているプレゼンですが、現場では、深い読みが勝利に繋がるんですね。勉強になります。
参考になったようで、うれしいです。広告に関しての話は、僕のメルマガに詳しく書いています。興味があるようでしたら、右上のIDEA MENUから>>WorkItemに入って「コピーライターの学校」をご覧ください。今後とも、よろしく!
プレゼンテーションに技術は必要か?…
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