梅雨に入りました。いま、あなたが見ている雨は、どんな雨ですか。
日本には、雨に関する言葉がたくさんあります。俳句の世界では、春夏秋冬の雨にまつわる季語があり、その圧倒的な量に驚かされます。梅雨や夕立といった日常会話で使うような言葉から、そうそう使うことがない難解な雨の表現もあります。夏の雨に限定すると、虎が雨、濯枝雨、分龍雨なんて、まったくなんのことやらわかりません。逆に、喜雨(きう)といえば、多少は想像がつくのではないでしょうか。日照りが長く続いて、草木も生気を失いかけたころ、降ってくる雨。恵みの雨という感じでしょう。
つまだちて見るふるさとは喜雨の中(加藤楸邨)
樹雨(きさめ)というのは、森の中で枝や葉から滴り落ちる水滴を雨に見立てて名づけたものです。これは天から降る雨ではありませんが、そう名づけたところに、すでに情感がありますよね。驟雨(しゅうう)というのは、急に降り出す雨、にわか雨で、ご存知の方も多いことでしょう。たまに日常会話でも恰好つけて使う方がいらっしゃいます(笑)。
水鳥の夢驚かす驟雨哉 (寺田寅彦)
雨が降っている。それだけのことなのに、日本人は、いくつもの素敵な言葉を生み出してきました。私たちは、そうした先人の知恵のおかげで、梅雨時をちょっぴり違う角度からも楽しむことができるのです。
憂鬱な雨で低気圧で頭がちょっと片頭痛な皆さん、これぐらいのことで負けるもんか、ですね。
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