ケータイ 【rough story 11】

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上空から徐々に地表の人間の姿が見えはじめた。
ひとりずつ、手に電話を持って、
子供や若い人はもちろん、
白髪頭のおじさん、おばさんも、
何やら、小さな画面を見つめている。
渋谷のスクランブル交差点の真ん中に、
その男は、まるでスカイダイブしたように、すっくと着地した。
25年前から現代へ、タイムスリップしてきた男は、
携帯電話がこれほど普及しているとは思わなかった。
しかも、手のひらに収まるほど小型になっている。
男は、あらためて周囲を見回した。
誰もが小さなケータイとにらめっこしながら歩いてる。
それでも不思議なことに、誰ともぶつからない。
スクランブルの信号が点滅して、赤へと変わった。
真ん中に立っていた男はあわてて走った。
しかし、歩行者の誰も…
運転者でさえ、男に気づかなかった。

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