食 う 【rough story 104】

「食うために、働く」。大正生まれの親父がよく言ってた。
「働くために、食う」。戦中派の兄貴がよく言ってた。
食欲というものが、人間を大きく動かしているのは確か。
戦後生まれの僕は、少年時代から食生活がどんどん向上し、
20代頃から、グルメなんて言葉がもてはやされるようになった。
「おいしく生きるために、食う」。
そんな時代がバブル崩壊まで続いてきたように思う。
でも、いまは、いまの若者はどうなのだろう。
おいしいものを食べることが、成功のシンボルでもあり、
そこをめざして成り上がってきたのがバブル体験世代だが、
そんな贅沢な美食志向の若者はもう少ないだろう。
過食症や拒食症と言えば病気の領域だが、
それほど重度な神経症でなくても、
「食う」ことに対して、やや神経質になっているように見える。
まぁ、実際、農薬とか不当表示とか、いろいろ実害もあり、
だれだって神経質にならざるを得ない側面もあるにはある。
だが、ちょっとくらい虫に食われていたり、
ちょっとくらい腐っていたり、ちょっとくらい…
そのちょっとの基準がいまの若者は厳しいのだ。
もうちょっと、ゆるやかで大雑把でもいいんじゃないか、と。
生存のための防衛本能が働いているのかもしれないが…。
現代は、そういう意味では、若者に限らず、
「生き残るために、選んで食う」。そんな時代かなぁ。

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