マイウェイ 【rough story 34】

若い頃、おじさんがスナックで歌うマイウエイが嫌いだった。
歌のうまい中年は、なぜか、この歌を熱唱するのだった。
マイウェイという歌を、嫌いなわけではない。
フランクシナトラはかっこいい。美空ひばりや布施明も素晴らしい。
でも、おじさんが歌うのは、どうも、いただけないのだ。
歌のうまいおじさんが、嫌いなわけでもない。
ほかの歌を上手に歌ってもらって、いっこうにかまわない。
ただ、マイウェイだけは、歌って欲しくないのだ。
なぜ、そう思うのだろう、なぜ、かな。
ちょっと考えたけど、いくつか、思い当たるけど、
まぁ、若い頃は、じぶんの道がわからずにいて、
じぶんなりの道を歩んできたおじさんの自己陶酔が鼻についたのだろう。

いまでもスナックでは、マイウェイは歌われているのだろうか。
カラオケ設備のある酒場から、遠ざかっていて、よくわからない。
それと、じぶんが当時のおじさんの年齢になっていて、
それじゃ、じぶんの同年代がこの歌に思い入れがあるだろうか?
まてよ、カラオケはもう酒場にはないのかもしれない、と思ったり。
あの嫌いだった風景は、もう、見られない貴重な記憶かもしれない。
でも、仮に、そういう場がタイムスリップしたように残っていたとして、
おじさんが歌うマイウェイを、いまの僕はどう聴くのだろうか。
おそらく、嫌うほどではないでしょう。
むしろ、励ましてあげたいほどの哀愁を感じるかも…ね。

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