制作スタッフが、なぜ、気づけなかったのか?~愛知県警ポスター撤去騒動~

ここはコピーライターの雑記帳というブログですから、開設当初は広告やWEBについての記事が多く、今もGoogle経由でその関連の投稿記事がコンスタントにヒット数を稼いでいます。でも、最近はあんまり書いていなかったのです。ほんとうに久しぶりに広告についての記事を書きますね。

ツイッターで知ったのですが、愛知県警のポスターがあまりにも酷すぎて唸りました。このような広告がたとえ一時でも世の中に出回ってしまったのがじつに残念です。


内容に対する批判は当然ですが、ぼくは別の角度から、このようなポスターが生まれた背景を考えたいと思います。

お題は、痴漢撲滅キャンペーンです。対象は、若い世代です。

たとえば、クライアントから制作会社に、以下のような、つよい要望があったのかも知れません。
「若者にアピールしたいんだ。最近、ラインが流行ってるでしょ。それを使って、何か、表現できないかな」
このような要望、依頼に対して、広告クリエイターたちが知恵を絞った結果なのでしょうか。
それとも、制作会社からいくつもアイデアを出させて、その中のひとつの切り口だったのでしょうか。

いずれにしろ、ポスターが世に出るまでには、一般的に、いくつものアイデアが存在して、最終的にひとつの案が決定され、実制作のゴーサインが出されます。

クライアントはもちろん、コピー、デザイン、イラストなど何人ものスタッフの視線にもさらされているわけです。

それなのに、誰も、これは「おかしいぞ」と気づけなかった。

スルーされてしまったのは、何かがあるような気がします。

県警は、今回のポスターの作製理由を「今風で若者受けすると判断した」と説明。ただ、「痴漢は犯罪だという認識を広めたい、犯行をとどまらせたい、という気持ちでつくったが、本来の趣旨と異なる伝わり方になった」と、撤去に踏み切った理由を説明する。
—–朝日新聞デジタル6月5日より

この記事を読んで、やはり違和感を覚えました。

「痴漢は犯罪だという認識を広めたい、犯行をとどまらせたい」とのこと。

痴漢が犯罪だという認識が希薄なのは、その犯行に及ぶ当事者(予備軍)だけではないでしょうか。

痴漢は犯罪だと知っている多くの人は、痴漢行為をしようとはしません。

つまり、クライアントは、痴漢の当事者(予備軍)を対象にして広告を打ちたかったということになります。

しかも、犯罪を犯すと、噂がたって社会的にも抹殺されますよ、という脅迫的なメッセージを添えて。

公費を投じて、このようなメッセージを犯罪予備軍へ伝えることに、どれほどの痴漢抑制効果があるのでしょうか。
(※人間が厄介なのは、痴漢やスリ、泥棒、人殺しが犯罪であると認識していても、それをやってしまう場合があるということ。犯罪の認識さえあれば、犯行を思いとどまるわけではない…この論点は長くなるので別の機会に。)

ぼくが感じた違和感のもとを探っていくと、ターゲットの設定ではないかと思いました。

痴漢撲滅キャンペーンの対象は、痴漢の当事者(予備軍)ではなく、それ以外の周辺の人々にしたほうがいいのではないでしょうか。

行為を見て見ぬ振りをしていませんか。

声をあげる勇気を持っていますか。

助けないあなたも加害者ではないですか。

なんだか、いじめの構図と似ているような気がしてきました。

根は、深い、です。

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